かごしま黒豚
   

1.かごしま黒豚(くろぶた)のルーツと歴史

   

鹿児島県の誇るブランド豚「かごしま黒豚」。
誰でも一度は、その名前を耳にしたことがあるのではないかと思います。
そのルーツは、中国から琉球にわたり飼育されたものが、今から、約400年前、島津18代藩主・家久により移入されたのがはじまりと言われ その後、長年に渡り県内で飼育されてきました。

激動の幕末へと時代が移りかわる最中、水戸藩主・徳川斉昭公や、郷土の偉人・西郷隆盛もこよなく愛されてきたかごしま黒豚。
明治に入ると本格的に品種改良が進み、在来の黒豚とイギリスから来た「バークシャー」が交配されるようになりました。

時代が進み昭和20年代には、いよいよ東京に出荷が行われ、その美味しさと品質の良さが一躍注目されます。
鹿児島県産の黒豚は「かごしま黒豚」として、高品質な豚肉の代名詞として広く知られるようになっていきました。

   

2.同じ豚だけど…「白黒論争」勃発

   

高品質ととびぬけた旨味により、一気にブランド豚としての知名度を獲得したかごしま黒豚でしたが 丁寧jに育てるがゆえ、その生産効率は決して高いとは言えませんでした。
そのため、県内に「質より量」「生産効率の高い」白豚が導入され、豚における「白黒論争」が勃発するや 黒豚は圧倒的劣勢に立たされてしまいます。
すわ絶滅か… 先の見えない真っ暗な状況を救ったのは、強い意志を持った生産者や関係者のゆるぎない決意でした。
「量より質の時代が必ず来る」そう信じていた彼らは、昭和49(0974))年、黒豚の振興を決定。 品種改良をはじめとする生産者・関係者の努力が実を結び、頭数や農家数が徐々に回復の兆しを見せます。

かごしま黒豚


平成2(0990)年には、生産者を中心とした「鹿児島県黒豚生産者協議会」が設立。
かごしま黒豚を広く世の中に送り出したい、という強い思いが具現化され、今日における「かごしま黒豚」への高い評価の礎となったのです。

   

3.類を見ない「改良への情熱」

   

黒豚のおいしさは、国内でも類を見ない「改良へのあくなき情熱」に支えられてきました。
黒豚の「地元」である鹿児島県は、世界でも類をみないスケールで研究を行ってきています。
鹿児島県畜産試験場では、全国で唯一、バークシャー(黒豚)の「系統豚」の造成を行っており、サツマ、ニューサツマ、サツマ2001、クロサツマ2015といった 高品種の黒豚が続々と誕生。
「もっと美味しい高品質の豚を」という、おいしさを追求する熱い気持ちと姿勢に支えられ、進歩を遂げてきたのです。

かごしま黒豚
   

4.系統豚

   

系統豚とは、肉質に優れた一定数の基礎豚をもとに、交配と選抜を繰り返して完成された、遺伝的に優良で均質な豚の集団のことです。

アメリカバークシャー種を主体とし、発育に重点をおいた改良がなされている「サツマ」
イギリスバークシャー種を主体とし、肉質に重点をおいた改良がなされている「ニューサツマ」
サツマおよびニューサツマの血が混じっておらず、土着度の強い在来黒豚を主体とした上で 発育と肉質両方の向上を目的に改良されている「サツマ2001」

かごしま黒豚

そして、かねてから重ねられていた研究の成果が発揮され、新しく完成した「クロサツマ2015」は既存の系統豚の血が入っていない「純鹿児島産」の雌雄55頭に交配と選抜を繰り返した結果誕生しました。
背脂肪を薄くし、高級部位であるロース断面積が大きくなるよう改良をほどこしたと言われています。系統豚は、生体では決して県外に出さないようにされています。
徹底した品質管理と保護、その基本は豚の品種。
かごしま黒豚はとにかく「バークシャー(アメリカバークシャーは除く)」のみで、他の品種と混飼しないことを条件としています。

バークシャーは「六白」とも呼ばれ、黒い体にある白い斑点が特徴で。産子数が少なく発育が遅いものの、 筋繊維が細かく歯切れがよい、うま味をたっぷり含んでいるといった、他の品種にない特徴を多く持っています。
豚肉にはもともとタンパク質、ビタミンB群が豊富ですが、かごしま黒豚は、うま味成分であるアミノ酸を多く含んでいます。

   

5.美味しさの秘密は「さつまいも」とじっくりとした「肥育時間」

   

かごしま黒豚の美味しさの秘密、それはさつまいもを含んだ飼料を食べさせる、ということです。
そのおかげで脂肪の質が向上し、旨味、甘みが増すのです。
通常の1.2倍から1.5倍、日数にして230〜270日ほどの時間をかけてじっくりと肥育され、丁寧に育てられたかごしま黒豚は より引き締まった肉質を手に入れ、高品質の脂肪のため、ベトつかず、さっぱりと食べられるのが特徴。
鹿児島の豊かな自然の中で、さつまいもを含んだ飼料でのびのび育てられたかごしま黒豚は、やわらかい、歯切れがよい、旨味があると 三拍子そろった逸品。
しっとりとした艶やかな表面は美しく、甘みと旨味のバランスの良さと合わせ、県内外での高い人気も納得なのです。

かごしま黒豚
   

6.これぞ本物の証

   

かごしま黒豚の定義づけがしっかりとなされていなかった時代は、取扱業者それぞれの解釈での流通が許されていました。
ですが現在では、基準を厳守し美味しい黒豚を生産することに情熱を注ぐ「鹿児島黒豚生産者協議会」の会員が指定した 「かごしま黒豚販売指定店」には看板が交付され、出荷の際には、生産者名・出荷年月日・証明者番号を記入した「かごしま黒豚証明書」が添付されています。
この証明書こそ本物の証。
しっかりした品質を保証する、高い信頼のしるしとして認知されています。

紆余曲折を経て、国内外での人気を得てきた「かごしま黒豚」は、鹿児島の誇る大きな財産と言えるでしょう。

かごしま黒豚
   
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